「弁護士とは」

弁護士が世間でよく言われることに「あんな悪い奴の弁護をするのか。」「弁護士は黒いものでも白いと言う。」という非難があります。

しかし、本当に「悪い」かどうか、「悪い」としてもどのように「悪い」のか、それは公正な裁判をしてみないと判らないことです。
刑事裁判では、被疑者被告人は無罪の推定を受けています。警察・検察はこの推定を覆す立証をしなければなりません。この方式は、近代国家において民主主義が確立する過程でつくられてきたものです。
それまでは権力に都合の悪い者は思いのままに逮捕され刑罰を加えられてきたことは歴史の事実です。
また、「悪い奴」であっても適正な裁判を受けることは、「悪くない人」にも適正な裁判を保障することにつながるわけです。

それから弁護士が黒いものを白くするというのは誤解であり、もし、本当にそのようなことをする弁護士がいたら、それは大問題です。弁護士には真実義務があり、積極的に嘘を言うことは、たとえ被告人・依頼人のためとはいえ、認められるものではありません。

しかし、物事はいつも黒と白がはっきり2つに分かれるものではありません。黒から白まで濃淡があります。誰でもそれなりの言い分があります。
その人の立場に立って弁護する、代理するのが弁護士なのです。

弁護士の仕事は、いわば煮え湯に手を突っ込むようなものです。争いごと、裁判沙汰に割って入るわけですから、正しい法的知識はもとより健全な常識をもって判断しないと弁護士自身が大火傷を負ってしまいます。

私は、いつも、このことを肝に銘じているつもりです。

(春名一典)

2006年07月01日